7色のお守りストラップ

2/35
前へ
/35ページ
次へ
「ちょっと、殿村くん。近付くなって、この前言ったばかりでしょ?」  教室前に着くと、先に来ていた頼子が寄ってきて、腰に手を当てて殿村くんを睨んだ。 「なんだよ、今町。ヤキモチもいきすぎると可愛くないぞ」 「直ちに目隠しされて、血を抜かれる錯覚実験でも受けてください」 「それ、結局死ぬやつじゃなかったか?」 「あら、ご存じだったとは露ほども知らず」  互いに乾いた棒読みの笑い声を上げているけれど、目は笑っていない。このふたりは仲がいいのか悪いのかよくわからないけれど、会話のテンポだけはいい。 「おい、殿。何朝練さぼってんだよ」  ふいに、廊下を向こうから歩いてきた隣のクラスの男子が、殿村くんの肩に手を置いた。  身長も高くガタイもいい彼に、 「おはよ。朝練て今日からだったっけ?」  と、とぼける殿村くん。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

535人が本棚に入れています
本棚に追加