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『姫野?』
「あ……うん。ごめん、やっぱり眠くて」
『悪い。じゃあ、切るけど……本当に何もない?』
「うん、大丈夫。それじゃ……おやすみなさい」
『おやすみ』
電話を切った私は、起こした上半身をまたベッドに勢いよく寄りかけた。そのせいで将棋盤と駒が雪崩のように落ちてくる。
私はそれを片付けることすら億劫に感じて、ただぼんやりとぐしゃぐしゃになった将棋の駒を眺める。
本当に聞きたいことも聞けず、本当に言いたいことも言えず、トイレで言われていたとおりだな、私。自分の意志がなくて、自分から……動けない。
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