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痛すぎる自覚
「和奈、次は美術でしょ? なんで数学の教科書持ってるの?」
「あ、ホントだ。……危ない」
金曜日。教室を移動するために廊下に出ようとすると、頼子が私の肩に手をかけて、
「ねぇ、ここ数日本当にぼーっとしてるけど、本当にどうしたの? まさか過度なダイエットとかしてないよね?」
と聞いてくる。
「してないしてない」
私は笑って誤魔化して、教科書を取り換える。
「頼子、また面白いデザイン期待してるよー」
「美術室で待ってるねー!」
廊下を先に行くクラスの女子ふたりが、頼子を振り向いて手を振ってきた。
頼子は手を振り返し、
「はいはーい。あとでねー」
と答えた。
こころなしかそのふたりの声が、トイレで立ち聞きしてしまったあの声に聞こえる。
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