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「これ、俺のひとり言だと思って、聞かなかったことにしてね。明日美さんはもうとっくに律ちゃんに告っててさ、律ちゃんはその答えを保留中ってことにしてるんだって。俺が思うに、律ちゃんは意外と真面目だから、ちゃんと好きになってから交際したいと考えてるっぽいんだよね。今、恋愛感情を温め中、っていう感じかな」
私の頭の中に、
『差出人はわかっているけど、その人のことは好きじゃないし、つきあわない』
その言葉がよみがえった。
たとえイタズラだと思っていても、央寺くんは、そうはっきりと言っていた。
そうだよね。本当に恋愛感情が皆無だったら、すぐに断るはずだ。保留にするっていうことは、気持ちが多少なりとも動きそうな予感があるからで、それだけ明日美さんが魅力的な人だからで……。
考えながらパーカーのポケットに手を突っこむと、お守りに指が当たった。さっき明日美さんに渡すことを拒んだたかだか百円のそれを握りしめると、胸がじわりと痛みを訴える。
「あー寒い。ちょっと律ちゃん呼ぼうよ。姫のん、突っ立ったままだと風邪ひくよ」
「えっ……」
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