痛すぎる自覚-2

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 関谷くんに半ば強引に腕を引っ張られ、足がもつれそうになりながら店の入口に向かう。 ふたりが一緒にいるところを見たくない。なぜかそう思うも、あっという間にドアの前まで来てしまった。  そして自動ドアをくぐってレジから丸見えになると、カウンター越しに笑い合っていた央寺くんと明日美さんがこちらに注目して、 「いらっしゃ……」 と同時に言いかける。  目を見合わせたふたりは一緒に噴き出し、明日美さんが、 「バイト服じゃないのに、挨拶してやんの」  と言って央寺くんを小突いた。 「ちょっとちょっと、俺はお客さんだから、ちゃんと挨拶してくださいねー。いちゃつくの禁止~」  関谷くんが店内に入り、ふたりのところまでずんずん進む。私は自動ドアの手前にたたずんだまま、その仲の良さそうなやり取りを眺めていた。一歩下がると自動ドアはゆっくりと閉まり、ガラスドアに印字されたレンタクルの文字の向こうで、楽しそうに話す三人が遠く見える。  蚊帳の外って、こういうことを言うんだろうな。最初からわかっていた。地味で引っこみ思案で卑屈な私は、自分に自信なんて持てなくて、あんなふうに輪に入れないってこと。自然な自分を出して受け入れてもらえるような人間になんて……なれないんだってこと。
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