794人が本棚に入れています
本棚に追加
「頼子、まだ見るの? 私……ちょっとトイレに行きたいんだけど」
嘘の理由で体育館から離れようとすると、
「あ、今ちょうど休憩になったみたいよ? 体育館の中のトイレ借りたら?」
と言って、せっかく靴箱の隅に隠れていた私を引っ張りだす頼子。
「ちょっ……待って」
慌てて引き返そうとするも、そんな私なんて気にせずに体育館に入り、コート脇をスタスタと歩いてトイレへと連行される。やっぱり黙っていたほうがよかったと反省しても、もう遅い。
「やっ、あのっ、頼子っ、本当に」
挙動不審な私たちは体育館内で目立ったのだろう、殿村くんがすぐにこちらに気付き、
「やったー、応援しに来てくれたんだ」
と寄ってきた。
「違……」
「違うわよ。あの人を見に来ただけ」
「あの人? ……あぁ」
頼子が目で合図をしたほうを私も殿村くんも見る。
最初のコメントを投稿しよう!