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まゆをひそめて聞かれ、
「……違う」
と答えた私は、うなだれながら踵を返した。
もう、体育館には来ないほうがいい。央寺くんだって、私とはもう関わりたくないような迷惑そうな顔してた。こちらが悪いとはいえ、あんな目であんな態度を取られるくらいなら、もう……。
「和奈ちゃん、ごめんね」
殿村くんの声に振り返ると、彼はぜんぜん悪びれていない笑顔だった。手を振ってきたから振り返し、ふう、とため息をついてまた歩きだす。
殿村くんって、悪い人じゃないけど、少し無神経なところがある。
「こら、幸せが逃げるわよ? 吐くだけじゃなくて、ちゃんと吸いこみなさいよ」
頼子から背中を叩かれた私は、慌てて背筋を伸ばして息を吸いこんだ。体育館から外へ出ながら、そういえば頼子、いつもなら怒るところなのに、なんで今の件では殿村くんを責めなかったのだろう、と思った。
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