二度目のラブレター

19/24
前へ
/24ページ
次へ
 気を使わせていたんだろうなと思って、苦笑いを返す。たしかに、今の自分と比べたら最初の頃は目も当てられないくらいだった。ほとんど相槌しか打ってないとはいえ、こんなふうに店長と会話することができるようになるなんて想像すらしていなかったし。 「まぁ、いろいろあるよね、年齢関係なくさ」  店長は、頭のうしろで手を組んで、折りたたみ椅子に体をのけ反らせて天井を仰ぐ。 「僕も今でも弱音を吐いたりうまくいかなかったり壁にぶち当たったりするけどさ、二十代になったら十代の自分を笑い飛ばせたし、三十代になったら二十代の自分を笑い飛ばせたから、きっと四十代になったら今の自分を笑い飛ばせるんだろうって信じて、がむしゃらにやってるよ。あ、ちなみに僕、三十八歳ね」  店長がそんな話をしてくれるとは思わなかった。店長は立ち上がって窓際に行き、ブラインドを上げる。そして窓を開けて外を見た後で、こちらへと微笑みかけてきた。 「だから、大丈夫大丈夫。未来の自分が今の自分をちゃんと笑い飛ばしてくれるからさ、素直にやりたいようにやるのが一番。さぁ、雨も上がってきたし、今から混むかもね。姫野さん、頑張ってね。大変な時は呼んでね」
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

794人が本棚に入れています
本棚に追加