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レジには私ひとりだ。心臓がドキドキして、緊張からかちょっと呼吸が苦しくなる。
思い出したのは、中学の時に万引きの現場を目撃しつつも、怖くて何もできなかった苦い過去。盗んだ男の背後に近寄りながら、後悔するくらいならちゃんと行動に移さなきゃと、私は自分自身を奮い立たせた。
「あのっ!」
「……え」
「バ、バッグの中、見せてください」
振り返ったそのお客さんは、二十代半ばくらいだろうか、目深にかぶった黒い帽子の影にギョロッとした目が光る。
「はあ?」
その顔の眉間に、思いきりしわが寄ったのがわかった。
「私、見てました! 中にDVDを入れるところ。だから」
「何言ってんの? アンタ。そんなことするわけないじゃん」
顎を上げ、威圧するように細い目で見下ろしてくる男。私の身長が低いこともあるけれど、一歩近寄られたことで、とてつもなく彼を大きく感じた。
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