794人が本棚に入れています
本棚に追加
教室の入口に立っていた頼子も、こちらを見ていた。かと思うと、ツカツカとこちらに歩いてきて、あっという間に殿村くんの横に立ち、彼の頬をすかさず平手打ちする。
「いってっ!」
「そういうことをやっていい女とやったらダメな女くらい、判別できるでしょ? バカなの?」
殿村くんを平手打ちできて、バカ呼ばわりまでできるのは、頼子くらいだろう。でも、頼子は今までで一番怒っていた。歯を食いしばり、もう一度殿村くんを叩こうとしているのか、右手を弓のようにしならせて構える。
「頼子っ! 殿村くん、わざとだよっ! 私と頼子を仲直りさせようと……」
「わざとだとしても、だからこそダメでしょ! 」
「いてっ、痛ぇーってば、今町。ごめんて」
今度は腕に拳が入り、殿村くんは両手をあげて降参のポーズを取る。教室にいる全員が、こちらを見ていた。でも、もうそれどころではない。
「わ……私が自分から動けないから、だから気を使って……」
「来なさいっ、和奈」
最初のコメントを投稿しよう!