like like like 逃げるが勝ちさ

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 結局はセンスの違いなんだ。大人だから、先生だからといって期待しても無駄なんだ。  顧問から貰ったプリントを鞄に詰め込む。  そんなことより急がなきゃ。男子の着替えはあっさりだから、コウちゃんすぐに帰ってしまう。  練習用ユニフォームの上からジャージ上下を着て、そこここに固まっているグループの脇をすり抜け女子更衣室を後にする。  お先にと声を掛けるのも忘れずに。例え返事などないと分かっていても。挨拶は最低限の礼儀だと躾てくれた母親の努力に報いるように毎回義務を果たす。  外に出る。  夕暮れの空気は大分肌寒くなってきたが、運動後の火照った体には心地よい。まあそれも一瞬だけですぐ冷えるけど。  校門を出たところで立ち話をしている男子の一団を追い越した。 「ちさとぉー」  理由なく人の名前をからかうように呼ぶのはやめて欲しい、そう言ってやめる奴らなら最初から呼ばないだろうから期待もしない。ここも結局センスの違いなんだ。  小走りで無視した私の背中に「コウちゃぁーん、待ってぇー」と変声期の汚い声が斬りつけてくる。ドッと湧き上がる笑い声に飲み込まれる前に逃げなくては早く。
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