変わる景色

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 靴紐が曲がっていても、スカートだったとしても、走っちゃえば一緒だ。  走るまでは小さなことが気になったり二の足を踏んでいても、走りだしたらそんなのどうでもよくなる。なんだ、私走れるんだって、簡単なことだったんだって知る。  そうか、私はいつも動きだす前に、小さな傷や綻びにやる気を削がれてばかりだったけれど、なんでも始めてしまえばよかったんだ。  変わりたいとぼやいていても、結局そうしないのは自分自身だし、そうできるのも自分自身だ。  とりあえず、自分で自分の足を一歩前に出せば、それだけでよかったんだ。  殿村くんのバッグの7色のストラップが、色鮮やかに踊っている。頼子のひっつめ髪も大きく揺れて、私のスカートも翻る。  体育館へとまっすぐに伸びる渡り廊下、十二月の風が赤くなった頬を心地よく撫でて、私はまた大きな声で「ハハハッ」と笑った。
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