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そう、あいもかわらず緊張しいもあがり症も治っていない。お客さんの前でも、やっぱり慌ててミスをしてしまうこともあるし、どうしていいか判断に迷ってスタッフコールボタンを押すこともしばしば。
それでも、俯くことはしなくなった。ちゃんと目を見て伝えれば、相手の表情は優しかったりすることもある。
もちろんいいことばかりじゃないけれど、自分が今まで見逃してきていたことに気づくこともあって、小さな変化が波紋のように私の心を豊かにしてくれている気がする。
「姫野? 聞いてた?」
「え? あぁ、うん」
スタッフルームを出て、それぞれの持ち場に向かう途中、央寺くんの声に我に返る。私はちょうど、レジカウンターに入るドアに手をかけたところだった。
「じゃあ、きまりね。今日のバイト上がり」
「うん?」
「クリスマスイブだから、遊びに来るということで」
「ええっ?」
背中をポンと押され、央寺くんが手を振って通路の奥へ曲がっていった。
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