変わる景色

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変わる景色

 翌週の金曜日。 「へぇ、付き合いはじめたんだね、和奈ちゃんたち。まぁ、なんとなくわかってたけど」 「なんで?」  放課後の教室に戻ると、教卓をはさんで殿村くんと頼子が立ったまま話していた。頼子は生徒会の資料をホチキス留めしていて、殿村くんは教卓に両頬杖をつき、その様子を見ている。 「先週の練習試合で、わりと敵意むき出しだったから。シュートポイント数、結局同点だったけど」 「あら、あんな涼しげな顔の人がそんなことをするのね。和奈と一緒に体育館に残って、見学しとけばよかったわ」  なんの話をしているのだろう。  声をかけようとしたけれどタイミングを逃し、教室のドアのわずかな隙間からふたりの様子を観察し続ける。 「とにかくよかったね。どおりで和奈ちゃん、可愛さに磨きがかかったんだ」 「とにかくよかったわよ。殿村くんに恋心を持たせることだけは阻止したかったから」 「あいかわらずヤキモチ焼きだね、今町さん」 「あいかわらず軽いわね、殿村くん」  ホチキス留めが終わったらしく、冊子になった資料を教卓の上でタンタンとそろえ、ふう、息をつく頼子。 「ていうか、生徒会の仕事が終わったから教室に来てみたら、なんであなただけ残ってるのよ?」 「待ってた、今町を。告白しようと思って」 「はいはい」 「付き合おうよ、俺と。きっと楽しいよ?」 「謹んでお断りさせていただきます」  あれ……? これはいつもの冗談なのかな?   そう思って、なおさら教室に入りづらくなる。そして、この状況が盗み聞きみたいで、だんだんドキドキしてくる。
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