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「……ねぇ、オウル」
「なんだ」
下校時間が過ぎ、2人は帰る支度をしていた。課題を与えると言っていた先生は大変ご立腹だろうから、見つからないように帰らないといけなかった。
今日初めて話して、学校生活で1番長く言葉を交わした、つい2時間前まで名前も知らなかった優等生のカナリアは、机に目を落として、妙に静かな声音で言った。
「あなた、やればできる子だわ」
「なんだ急に」
「あなたの教え方、とてもわかりやすかったわ。あなた真面目に勉強すれば、他のこともちゃんとできると思うの」
「そうかな。そんなことないと思うけど」
カナリアはオウルの席を見た。
「あなた……いつも、授業を聞かずに窓の外を見てるわ」
「………」
「わたしが口を出すようなことじゃないのはわかっているんだけど……」
「………」
「どうして、オウルは勉強しないの?」
オウルはスカートのポケットに手を入れると、短くため息を吐いた。
「……必要ないから」
「どうして?」
「……学校を卒業したら、軍に入る。だから必要ない」
カナリアがオウルのことを見た。なんでこいつがそんなに寂しそうな顔をするんだろうと思った。
「……どうして、軍人に?」
理由はないが、顔を合わせるのが嫌になって、オウルは壁の方を向いて答えた。
「軍はどこも人手不足だから、間違いなく入れるっていうのと……あと……」
「……あと?」
誰にも話したことがなかった。でも、なぜかカナリアには話してもいいと思えた。
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