chapter 0. オウルとカナリア

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「アダムに、会ってみたい」 「……アダムに?」 「うん」  あの、怪人に。  軍人となれば、当然国を防衛するために、どこからともなく現れるあの怪物どもと戦うことになる。  死体しか扱えない研究者よりもずっと近くで、生身のヤツらと相対することができる。 「……なんで会いたいのかは、訊いてもいい?」 「別にいいよ。でも、不謹慎だから、誰にも言うなよ」 「言わないわ」 「昔、間近でアダムを見たことがある。大きくて強くて、ただただ恐ろしくて――でも、神秘的で、美しいと思った。もしも対等にあれと向き合えたら――何か、わかる気がするんだ」  見えないものが見える気がする。  こんなことを言ったら笑われると思った。でも、カナリアは笑わなかった。  逆に、カナリアは意外な返しをした。 「実はわたしもね、アダムに会ってみたいと思ってるの」 「……へぇ」 「生物学を専攻しようと思ってる。アダムの研究をしてみたいの」 「……そうか」 「理由は訊かないの?」 「……ならどうして?」  カナリアが答えなかった。カナリアが目を合わせないと喋らないつもりだとわかって、オウルはちょっと間を開けてから、ちらっとカナリアのことを見た。 するとカナリアは、自嘲気味に笑った。 「わたしもアダムにとても興味があるの。嘘じゃないのよ。あなたの話を聞くと、確かに美しいかもしれないなんて思うくらいには、アダムのことを知りたいの」  可笑しそうにほほ笑んで、カナリアはオウルに言った。 「男のことを教えてもらうほどにね、こういうことはあまり言っちゃいけないけど……あなたのこと、『男みたい』だって思ったわ」 「………」 「言わないか迷ったんだけど、あなたなら許してくれると思って」  オウルは教室のドアの方を振り向き、歩き出した。カナリアの声が背中を追った。 「……怒った?」 「いや、別に」  ドアに手をかけて、オウルはカナリアのことを振り返った。オウルは歯を覗かせて笑った。 「でもそれ、死語だぞ」
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