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10年後。
大アジア連合軍北京第2基地に、東京のアダム研究チームが訪れていた。顔合わせのために会議室に集められたのは研究チーム5人と、研究員を護衛する任務につく小部隊10人余りだった。
部隊は対アダム戦に特化した精鋭たちだった。
「初めまして東京の研究チームの皆さん。所属とか色々と話したいところだけど、これから長い間ともに行動するので、堅苦しいのはなしにしよう。うちの隊員たちを紹介するよ」
小柄ながら特殊部隊の隊長を務める鷹木少佐が、その場を取り仕切った。研究チーム同伴によるアダム産卵地帯の調査にあたり、軍と研究所の連携を取り計らった人物で、『寛大な変人』として知られている。
「うちの部隊は既婚者7人、子どもがいないのは鷲田軍曹だけかな? お見合いじゃないから、仕事中にアプローチし合うのは禁止ね、研究チームの皆さんも。皆さんはご結婚なさってる? 勤務時間外でお喋りするのは大いに結構。ちなみにわたしは子ども3人いる。あとで写真見せるよ」
軍服を着て整列した隊員たちのうちの1人が、口を挟んだ。
「隊長、無駄話が長いです」
「これは失敬。悪かったね梟澤中尉」
鷹木隊長は、今しがた発言した部下を手で指し示し、研究チームに紹介した。
「こちらは梟澤中尉。うちの副隊長。口は悪いけど優秀だから仲良くしてやって。まだ未婚だよね?」
「ええ、まあ」
特殊部隊のなかでも、副隊長は明らかに浮いていた。体格のいい女たちの並ぶ軍人のなかでも目に見えてひと回り筋肉が多く、獣のような三白眼は人並み外れた眼光を放っていた。
顔には無数の傷があり、あらゆる場所でアダムによる引っ掻き傷が交差していた。他にも左耳が半分ほど欠けており、袖から覗く手も傷だらけで、歪に変形していた。
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