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軍基地の屋上で風にあたりながら、2人は話した。実に9年振りの再会だった。
その場所は監視塔からよく見えた。監視塔にいる兵士が、2人に向かってライトの明滅による信号で『恋人かい?』と送った。
オウルは監視塔に向かって中指を立てた。
「本当に久しぶりだわ。卒業式以来でしょ?」
柵に手をついて話すカナリアは白衣を着ていて、風が吹くたびに裾がなびいていた。
「そうだな」
「全然連絡寄越さないから。どこにいるかもわからなかったわ」
「お前もだろ」
オウルは柵に背中で寄りかかり、電子タバコを吸っていた。本物の煙草は、男が消えて間もなく完全に廃止になった。現存する本物は博物館にしか残っていない。
「まるで別人だったから、名前を聞くまでわからなかったわ。あなたはわたしに気が付かなかった?」
「気づかなかったね。顔を見てなかったから」
「相変わらずね。でもすぐにわかったでしょう?」
「ああ、お前は変わらないな」
「そう? 髪はずっと伸びたんだけど」
「切りに行くのが面倒なだけだろ」
「お見通しね」
「変わらないな」
「あなたも、あまり変わらないわね」
柵の上に腕を組んで、カナリアはオウルの横顔に視線を送った。
「本当に傷だらけだわ。ひどい顔してる」
「オブラートに包めよ、優等生」
「昔、そんな話もしたわね。よく覚えてるわ」
カナリアが手を伸ばして、縦に長い傷が走ったオウルの頬を撫でた。オウルはタバコを吸うと、はあと口から白い蒸気を吐いた。
「苦労したのね」
「まあな」
「服の下も、傷だらけなの?」
「まあな」
「全部アダムにやられたの?」
「ほとんどヤツらの引っ掻き傷だ」
オウルの欠けた耳に触れ、カナリアの手が止まった。
「ほとんどって?」
もう1度タバコを吸ってから、オウルは答えた。
「他の傷は訓練で負ったものと……あと、人につけられた。アダム以外にも、人を相手にする任務もあった」
「……そう」
オウルから手を離すと、カナリアは再び柵に寄りかかった。
「卒業した後、すぐにアダムと?」
「ああ」
「東京所属だっけ?」
「それは落ちたから、横浜所属。陸軍で、すぐに対アダム部隊に入った」
「それからずっと?」
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