chapter1-1. 大アジア連合アダム特別調査隊

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 軍基地の屋上で風にあたりながら、2人は話した。実に9年振りの再会だった。  その場所は監視塔からよく見えた。監視塔にいる兵士が、2人に向かってライトの明滅による信号で『恋人かい?』と送った。 オウルは監視塔に向かって中指を立てた。 「本当に久しぶりだわ。卒業式以来でしょ?」  柵に手をついて話すカナリアは白衣を着ていて、風が吹くたびに裾がなびいていた。 「そうだな」 「全然連絡寄越さないから。どこにいるかもわからなかったわ」 「お前もだろ」  オウルは柵に背中で寄りかかり、電子タバコを吸っていた。本物の煙草は、男が消えて間もなく完全に廃止になった。現存する本物は博物館にしか残っていない。 「まるで別人だったから、名前を聞くまでわからなかったわ。あなたはわたしに気が付かなかった?」 「気づかなかったね。顔を見てなかったから」 「相変わらずね。でもすぐにわかったでしょう?」 「ああ、お前は変わらないな」 「そう? 髪はずっと伸びたんだけど」 「切りに行くのが面倒なだけだろ」 「お見通しね」 「変わらないな」 「あなたも、あまり変わらないわね」  柵の上に腕を組んで、カナリアはオウルの横顔に視線を送った。 「本当に傷だらけだわ。ひどい顔してる」 「オブラートに包めよ、優等生」 「昔、そんな話もしたわね。よく覚えてるわ」  カナリアが手を伸ばして、縦に長い傷が走ったオウルの頬を撫でた。オウルはタバコを吸うと、はあと口から白い蒸気を吐いた。 「苦労したのね」 「まあな」 「服の下も、傷だらけなの?」 「まあな」 「全部アダムにやられたの?」 「ほとんどヤツらの引っ掻き傷だ」  オウルの欠けた耳に触れ、カナリアの手が止まった。 「ほとんどって?」  もう1度タバコを吸ってから、オウルは答えた。 「他の傷は訓練で負ったものと……あと、人につけられた。アダム以外にも、人を相手にする任務もあった」 「……そう」  オウルから手を離すと、カナリアは再び柵に寄りかかった。 「卒業した後、すぐにアダムと?」 「ああ」 「東京所属だっけ?」 「それは落ちたから、横浜所属。陸軍で、すぐに対アダム部隊に入った」 「それからずっと?」
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