chapter1-1. 大アジア連合アダム特別調査隊

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「ずっと。隊を移動しながら、ずっとアダムと戦ってた」 「そんなに傷だらけになりながら?」 「……ああ」 「未婚だってね。軍にはいいひといなかったの?」 「……いたかもしれないな。いなかったかもしれんが」 「ふぅん。やめようとは1度も思わなかったの?」  フゥー、と、オウルは煙を吐いた。 「思わなかったな」 「そんなに傷だらけになっても?」 「なってもだ。これしかできない」  タバコを挟む指を見て、カナリアはオウルの左手の小指が短くなっていることに気が付いた。  顔に目を移すと、オウルがカナリアのことを見ていた。カナリアは小首を傾げた。 「お前は大学行った後、研究員にエスカレーターか? 天才だもんな」  傷と治療の痕のせいで、オウルの顔は昔とかなり変わっていた。ただ性格と声だけは変わっていなくて、カナリアは安堵感を覚えた。 「そうね。東京を拠点にして、アダムの生態とか出生を調べてたわ」 「博士か?」 「博士よ。いまじゃこの歳で博士号も珍しくないわ。ちなみにわたし、主席じゃなかったの。わたしより頭のいい生徒が2人いたわ」 「お前もまだ未婚か?」 「どっちだと思う?」 「結婚してるとしたら、その頭のいい2人のどっちかが相手だな」  カナリアはオウルを指さして、にやっとした。 「外れよ。その2人同士がくっついて、とっくに結婚した。わたしはまだ独身」 「互いに三十路でつらいところだな」 「まだ27よ」 「3年なんて誤差だろ」 「そうね、3年間、窓の外を眺めて過ごしたあなたにとってはそうかもしれないわね」  あっ、と、カナリアは手を叩いた。 「そういえば、あなたわたしに大学の合格祝いしてくれなかったわよね」  オウルは口からタバコを離してカナリアを振り向いた。 「は? しただろ」 「してないわよ。おめでとうって言われてない」 「言った」 「言われてない」 「言ったよ」 「言われてないわよ」
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