chapter1-1. 大アジア連合アダム特別調査隊

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 タバコをしまうと、オウルは空を仰いで深く息を吐いた。 「はぁ~。じゃあ、いま言うよ」  オウルはカナリアに手を差し出した。カナリアはにこっとほほ笑み、握手を交わした。 「博士号おめでとう、カナリア」 「中尉だったわね? あなたも昇進おめでとう、オウル。副隊長ですってね、凄いじゃない。会えて嬉しいわ」  傷だらけのゴツゴツしたオウルの手をさすると、カナリアの顔が曇った。薄くほほ笑んで、カナリアは訊いた。 「オウル」 「なに?」 「アダムと戦って、沢山殺した?」 「ああ、何体も殺した。本当は記録しないといけないけど、もう暫く数えてない」 「そう。……ねえ、オウル」 「なに」 「人を殺したことはある?」  一瞬だけ逡巡してから、オウルは答えた。 「あるよ」 「そう」 「………」 「つらかった?」 「いや」  オウルは瞼を伏せた。その先に映る見えない景色に思いを馳せて、オウルは言った。 「何もできないことの方が、つらい。それなら、間違っていても何かしていた方がいい」 「……そう」  やっぱり、変わった。  昔は何もしないで窓の外を見ていたのに。  いや、でも、本当は。  ずっと、あの教室から出て、誰かのためになにかをしたかったのかもしれない。  だから、ずっと、外を眺めて――。 「これは、大した話じゃないんだが」  自分と違い、傷一つない綺麗なカナリアの白い手を指で撫でて、オウルは独り言のように言った。 「昔……下半身に重傷を負って、死にかけたことがある」 「………」 「軍に腕のいい医者がいて、なんとか命は助かった。傷も今じゃなんともない」 「そうなの」 「だけど……子どもを産めない体になった」  カナリアの手がぴくっとした。オウルはカナリアの手を離した。
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