chapter1-1. 大アジア連合アダム特別調査隊

7/7
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
「アダムに胸の皮を根こそぎ剥ぎ取られたことがあって、培養皮膚を移植したけど、色っぽさはまるでない。昔から色気のある方じゃなかったけど。腰つきもごつくなった」 「………」 「いたずらに筋肉だけつけて、力ばかり強くした」 「………オウル――」 「昔、私のこと、『男みたい』だって言ったことあっただろ?」  オウルは肩をすくめて、微笑した。 「いまは、昔よりももっと男みたいになったよ」  カナリアは首を振って、オウルの頬を撫でた。 「いいえ、オウル。撤回するわ。あなた……男なんかじゃないわ」  カナリアはオウルの硬い胸に額をあてて、言った。 「あなた、男なんかよりもずっと、強いもの。ずっと強くて、優しいわ」  オウルはカナリアの頭に手を置いて、目を伏せたまま頷いた。 「……そうかもな」  監視塔の兵士は、気を利かせてこっちを見ていなかった。そんな気を遣わなくていいのに。  オウルとカナリアは、学生時代もずっと良き友人であり気の置けない互いの理解者で、そして決して恋仲になることはなかった。初めて会話したあの日にカナリアが断言した通り、互いに好みのタイプではなかったからだ。余計な感情の入る余地のない距離感は、2人にとって何よりも居心地がよかった。  オウルは言った。 「昔は、握力が100キロある男も、そういなかったからな」 「……そうね」  硬い胸から額を離して、カナリアはオウルの顔を見上げた。 「……えっ、あなた握力100キロあるの?」
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!