chapter1-2. エデン

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 今から約20年前、謎の生命体アダムは突然人類の前に現れた。  出生、正体、全てが謎だった。どこからともなく突如として現れた怪物たちは、猛獣のごとく、容赦なく人間に襲いかかった。  非常に獰猛であり、その膂力に任せてひとを殺し、肉を食らう。捕食中でさえ、新たな獲物を見つければそちらへ襲いかかるなど、異常ともいえる凶暴性は、まるで彼らの目的が捕食ではなく殺戮なのではないかと思わせるほどだった。  各連合軍は連携を取り合いながら、この20年間アダムに対抗する術を模索してきた。対アダム用新兵器の開発、民間人保護、アダムの正体の究明……。  いまだその正体が謎に包まれ、長きに渡って人類が防戦一方で苦しめられるなか、つい最近になって大きな発見があった。  未確認生命体アダムの産卵地帯――ヤツらの生まれる場所が、見つかったのである。 「あれが……エデン」  丘の遥か先にある地面が大きく陥没した、広大なクレーターを双眼鏡で覗きながら、カナリアはそう呟いた。  エデン――アダムが生まれる場所。本来の意味とは全く異なる使われ方をしているが、アダムになぞらえてか、誰かがいたずらにそう呼ぶと、軍内ではあっという間に定着してしまった。  台湾近郊の、深い山の奥地。現在地球上で確認されている12個のアダム産卵地帯のうちの1つ。  発見されたエデンは軍によって厳重な監視下に置かれているが、それでも尚アダムの襲撃は後を絶たない。12個の他の、いまだ見つかっていないアダム産卵地帯は倍以上あると予想されていた。  特殊部隊の誰かが「凄いわね」と感嘆を漏らした。誰もそれを咎めたりはしなかった。  事実、その景色は壮観だった。  森のなかにぽっかりと空いた直径5キロにも及ぶクレーター内には、巨大な血管のような肉質の網が蜘蛛の巣状に張り巡らされ、至る所に卵にも似た球体が無数に繋がっていた。
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