chapter1-2. エデン

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「これと同じものが、あと何個あるのかしらね」  カナリアは双眼鏡を覗いたまま、隣のオウルに話しかけた。 「直径5キロメートル。アダムの卵の数は推定1000~1500。現在確認されているエデンのなかで6番目の大きさよ」  オウルは唇を結んでじっとエデンを睨みつけていた。  エデンの監視状況を携帯端末で確認していた鷹木隊長が、「よし、オーケイだ」と呟くと、装甲車を親指でさして隊員と研究チームに催促した。 「なにはともあれ、いまからあの不気味スポットに向かうぞ。何が起こるかわからない。諸君、心してかかるように」  間近で見て、実際にその場に立ってみると、クレーターの大きさはよくわかる。視野に収まらないほどの広大さ。そこは1つの大地だった。 この場所の他にある11個のエデンも、同じようにクレーターのなかにできている。  約1世紀前に、無数の隕石が地球に降り注いだ。ここはその時のクレーターの1つだ。  そしてその隕石落下から10年を待たずして、男は滅んだ。 一説として、が滅んだ原因となる新種ウィルスの発生源はこの隕石だと言われている。隕石落下直後は放射能数値が異常に高く、130年経った現在まで調査すらままならなかった。あの時何がここに落ちたのか、何が起こっていたのかを知るすべはない。  もしこの説が事実であるとしたなら、世界各地に墜落した隕石からウィルスが広がり、地球規模で男を滅ぼしたという過程には信憑性があった。  しかし問題なのは、その男が滅ぶきっかけとなった隕石が落ちた場所に、アダムの産卵場が発生しているという点だった。男を滅ぼしたウィルスと関係しているのか、それとも隕石に付着していた別の何かが原因なのか、その一切はわかっていない。ただ、決して偶然ではないということだけは誰もが断言できた。  エデンは全て、これと同じクレーターに生じているのだから。
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