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「皮肉だな」
エデンに足を踏み入れ、オウルはそう吐き捨てた。
「男の生まれ変わりと言われるアダムが生まれた地が、男を滅ぼした原因かもしれないクレーターにあるなんて、皮肉でしかない」
「そうね」
対アダム用の装備をした特殊部隊と、兵士と同じ防護服を身に纏った研究チームは、装甲車からエデンに降り立った。
武器を持たない研究チームは、兵士と区別するための色違いの腕章をつけていた。ヘルメットの顎紐を窮屈そうにいじりながら、カナリアがオウルに尋ねた。
「エデンに来るのは初めて?」
短機関銃を小脇に抱え、オウルは答えた。
「初めてだ。隊長以外、全員がそうだ」
「まさに、未知の領域ね」
顎紐をきゅっと締めると、カナリアは装甲車を指さした。
「機材降ろすの手伝って」
「………」
周囲を警戒していたオウルは、手に握る銃と手招きするカナリアを見比べて、「やれやれ」と肩をすくめた。
オウルのため息を耳ざとく聞くと、カナリアは眉を寄せた。
「何よ」
「人使いが荒いのも変わらない」
「仕事をしに来たんだもの。こんな所ピクニックには選ばないわ。しっかり働いて力自慢」
「はいはい。仰せのままに」
数人の隊員を装甲車に残し、エデン特別調査隊はアダム産卵地帯の探索を開始した。指揮は鷹木隊長がとった。
「ではこれよりアダムの苗床、通称エデンの調査を始める。打合せ通り、研究チームは装甲車から半径100メートル以上離れないように。基本的にご自由に調査活動していただいて構わないが、常にうちの隊員が傍で警護する。故意に隊員から離れることはしないように」
特殊部隊の精鋭たちはただ優秀な兵士というわけではない。国連アダム調査機関による信頼を得た実績豊富な猛者たちであり、より密接にアダムと相対する彼女たちはアダムの機密情報を共有している。研究チームは隊員たちの目を気にすることなく調査に集中することができるわけだ。
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