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3年前
とてつもない気怠さと、麻酔で鈍らされた痛みと、薬品の臭いを感じながらオウルは目を覚ました。
そこは見慣れない部屋で、隣には見慣れないナースがいて、点滴の交換をしていた。かけ布団やシーツの肌触りには覚えがあって、ここが病室なんだとすぐに気づいた。
それまでの記憶はすぐに思い出した。医師に説明を受けるまでもなく、自分が生きていることが奇跡だと悟った。
オウルの意識が戻ったことに気が付くと、ナースは慌てて医師を呼びに行った。オウルは意外にも落ち着いていて、頭はまだイカれていないんだと思うと、それだけで安心できた。
オウルを執刀した白鳥医師は、もとは大アジア連合軍の衛生兵だったそうだ。戦地を離れすぐ、軍基地に隣接するこの病院の医師になり、アダムとの戦闘で傷を負った兵士たちの治療に専念しているという。医師としても優秀であり、更に現場にも精通している白鳥医師は基地内でも強い信頼を置かれていた。
頻繁に負傷し病院通いのオウルが白鳥医師のことを知らなかったのは、当時北京第2基地に配属されて間もなかったからだった。
「骨折は全身で22か所です。あと左肩も脱臼していました」
目が覚めてまもないオウルに淡々と症状を説明していく白鳥医師の口調は極端に業務的で、言葉は丁寧だが、まるでロボットが話しているみたいで親しみは感じなかった。オウルにはむしろその方が楽だった。
白鳥医師は長身で、茶髪がかった髪を後ろで束ねていた。白衣の下の手足は細く、戦地を離れてからはこちらの仕事が忙しくて、トレーニングの暇がないのだと後から教えられた。
「今回最も大きな損傷が、下腹部へのレーザー弾の被弾です」
オウルは身動きできないように、下半身がベッドに固定されていた。絶対安静、ということだ。
「その固定具もすぐに外れるので安心してください。ただ、傷は塞ぎましたが内部の損傷が激しく、出血もひどかったので、暫くは安静にしてください。それから……」
カルテからオウルの顔に目を移して、白鳥医師は言った。
「子宮を全摘出しました」
「………」
オウルは顔色一つ変えなかった。自分でもなんでかわからなかった。
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