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オウルに比べれば遥かに軽傷だが、鷹木も先の戦闘で負傷していた。頬にガーゼが貼ってあり、体の動きが僅かにぎこちないのは、脇腹の辺りに補助帯をつけているからだと思われた。
鷹木が着ている迷彩柄の軍服が、オウルの目に留まった。
「なぜ軍服を?」
「あの戦いの報告を、本部にね。本当は私も休ませてもらいたいんだが。死傷者が多かったから、ちょっとややこしくてね」
首の後ろの辺りを手でさすって、鷹木は言った。
「すまない。憔悴してる君にする話じゃないな」
「いえ、かまいません。死者はどれくらい?」
「……体が治ってからでもいいだろう」
「大丈夫です。むしろ、ずっと聞きたかった」
「………」
鷹木がため息を吐く理由が、オウルにはわからなかった。
「参ったね。全く君は……」
鷹木は視線を足下に落として話した。
「死者は25人。集団で現れたアダムは全て殲滅したが、こっちも相当痛手だ」
「うちの隊で死者は?」
「聞くのかい」
「ええ」
「中尉と曹長が戦死した。2人とも即死だったよ。退院したら挨拶にいくといい」
「そうでしたか」
鷹木は随分と、そのことをオウルに話すことが嫌そうだった。時折、鷹木は心底呆れた顔でオウルを見ることがある。
オウルの膝の上に置いた自分の手を見下ろして言った。
「中尉は、結婚していましたよね」
「ああ、奥さんにも挨拶してきたよ」
「大丈夫でした?」
「大丈夫、とは言えないな……」
「大変でしたね」
「君ほどじゃない」
「……その後、アダムの襲撃は?」
「ない。わたしらの見解では、長期間偶然行動をともにしていたアダムの1団が、たまたま駐屯基地の近くを通ったのだと思われる。総勢17体のアダムがともにいることは珍しい。ヤツらは団結はしないから、個々の行動規範が重なった結果だろう。ヤツらの行動理由は全て同じということだ」
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