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ははは、と笑ってみるものの、空笑いなそれに空しさしか残らず、溜め息を吐けば、白く染まった息が空へと消えていく。
「……帰ろう」
このままずっと待ち続けて、惨めな気持ちになるよりは、家でのんびりしていた方がいいのかもしれない。
きっと、友人たちとパーティーをすると伝えておいた弟には驚かれるだろうけど、早期解散したとでも言えば、納得してくれるはずだ。もしくは、何かあったのだと察するかもしれないが、それでも良かった。
「何が良いかな」
帰ろうと思って、足を翻せば、視界に白い『何か』が写り込む。
「え――」
嘘か何かだと思いたかった。
だって――
「ちょっ、ストーーーーップ!!」
だって、だって、だって……!
「何帰ろうとしてんの!? ずっと来るの、待ってたのに!」
慌てていたのか、白いコートだけを羽織ってきたらしい彼女に、困惑の表情を向ける。
「……えっと……そのコート、似合ってるね」
「そうじゃないよね!?」
何と言ったらいいのか分からず、見たまんまのことを口走ったけど、お気に召さなかったらしい。
「ねぇ、何で帰ろうとしたの? 私、ずっと待ってたのに」
「それは……」
邪魔したくなかったのと、待ち合わせ場所に誰もいなかったからだ。こっちは遅れていると思って三十分ぐらい待ってみたというのに、だ。
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