ただ、ひたすらに

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「一緒に過ごす最初のクリスマスだから、すごく楽しみにしてたのに……」 「あー……それはごめん」  とりあえず、謝っては見るものの、半泣き状態の彼女に、頭が痛くなってくる。  どうすりゃいいのさ、これ。他の人から見たら、完全に修羅場でしょうに。 「もういいよ。ほら、行くよ」 「え、どこに」  ぐいっと腕を引かれ、そのまま彼女につられるようにして、歩き出し、次第に走り出す。  ただ、目的地が分からず、尋ねてみれば――彼女は 満面の笑みを浮かべて、こう答えた。 「『どこに』って、会場だよ。みんな待ってるし、少し遅くなっちゃったけど――一緒にパーティーしよ?」  きっと邪魔物扱いされるんだろうな、とかいろいろ考えてしまったけれど、やっぱり彼女はこの世界の『ヒロイン』なんだと思わされる。  飾り付けされた街並みも、きらきらと輝くイルミネーションも、降り始めてきた雪も。白いコートを着ているだけの『普通の少女』であるはずの彼女を、まるで魔法を掛けたかのように変えていく。 「――――」  待って、待って、待ち続けて。  どんなに遅くなったとしても、きっと誰かが迎えに来てくれるのだろう。     
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