それは、必然

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乾いた心に、夜空に輝く星が沁みてくる。星に重なるのは王子様の笑顔だ。 「駐輪場で本を落としたって事は、自転車でモールに来たんでしょ。ご近所かな。偶然また会うかも」 そんな妄想をしていると、つい口元が緩んでしまった。が直ぐに真顔に戻った。 王子様の横に受付嬢が現れたからだ 。 「あいつぅ。何横に並んでるのよ、えぃ、はなれなさいよ」 由香は必死に両手を左右に振って二人を引き離そうと狭いベランダでもがいていたら、 「痛っ」 ベランダの手すりに右手をぶつけてしまった。 「ばかみたい」 右手を左手でさすりながら、冷静さを取り戻して部屋に戻った。 ソファに座ろうとした時、インターフォンが鳴った。 反射的に時計を見たら19時35分。 「誰?こんな時間に、あああ、早っ」 昨日ネット通販で、割れせんべい超お買い得セットを注文した事を思い出した。 「はいはい」 インターフォンの小さな画面に、宅配業者にしては帽子も被ってない。切れ長の瞳、鼻筋がスッとしていて、薄い唇。少し長い前髪が自然に左眉を隠している。 あの時の王子様が映っていた。 初対面の時とは、真逆の意味で由香は息が止まった。 偶然の出会いを妄想していたが、こんな再会は予想だにしていなかった。     
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