それは、必然

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偶然じゃない。王子にとっては必然の出会いだ。 小さな画面の王子は笑顔で何か語っているようだが、恐怖で耳に入ってこなかった。 直ぐにインターフォンを切って、ローテーブルの横にへたり込んで、スマホを手にした。 「管理人さん、204の鮫島です。知らない男性が、玄関にいるんです」 「はい、えっ、わかりました。確認しますので、一旦切りますね」 王子様に会いたいと願っていたはずなのに、そして、再び会えたのに。 解像度が荒い小さな画面でも王子様だった。 「私、ガラスの靴忘れたのかしら、履いてたのはくたびれたビーサンだし。それに、シンデレラじゃない。落ち武者だし。ふふふ」 何故、 突然、家に王子様が来た。その漠然とした不安と、恐怖を少しでも和らげようと、くだらない事をわざと口にして気を沈めていた。 「管理人さん、大丈夫かしら」 慌てて管理人さんに連絡したが、外に出て、あの変質者に…。 王子様から変質者へ、ジェットコースターのように頂点から真っ逆さまに落ちて行った、元王子。 「最初から変な人だと思ったのよ」 加速した負のジェットコースターは誰にも止められない。 「あの笑顔も胡散臭いのよね」     
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