それは、必然

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数分前は、夜空に浮かべて悶絶していた笑顔も今や、胡散臭いと言い切るほど、元王子の評価は地に落ちていた。 「だいたい、落し物拾っただけで、お茶に誘う?おっかしいわ」 負のジェットコースターが終わりになりそうになると、再び 悪口エンジンが投入される。 エンドレス負のジェットコースターのお陰で、恐怖はどこかに吹き飛んだ。 「管理人さん出ないわ」 気合いを入れるように、由香はスマホをギュッとジーンズのポケットにねじ込んだ。 玄関を出ようとドアを開けると 「キャッ」 予期せぬ勢いでドアが開いて、前のめりになって転びそうになった。 すると、迫ってきた人影に由香は再び玄関に押し戻された。 「えええ」 玄関の上り口で尻餅をついた由香が見上げた人影は、王子様、元王子、変質者だった。 「ひぇえ、なんで、何、何なの」 少しでも元王子から離れようと、お尻をズリズリ擦りながら、少しずつ後ずさりしている由香。 ブウウン、ブウウン、ブウウン。こもったバイブ音が聞こえた。 王子様はズボンのポケットから携帯を取り出した。 「はい、管理人です」 クシャッとなる笑顔で答える王子様。由香の右手のスマホは管理人さんと表記されていた。 大声をあげたいが喉が締め付けられて出ない。絞り出すようにやっと言葉が出た。 「管理人さんは、どうしたの」     
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