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それは、必然
「はぁー」
鮫島由香はマンションの部屋に帰って、玄関に座り込んだ。
「ああー」
買い物の疲労感では無い。王子様からの誘いを断った、愚かな自分への脱力感だ。
「もぉー」
何もする気になれない。ついに玄関入ってすぐの所で寝転んでしまった。
由香の部屋は、玄関を入ってすぐ左に洗濯機、洗面所、小さなキッチンが一列に並んでいる。
通路を挟んで、浴室、トイレがある。玄関から見えるため、コンクリート打ちっぱなしで、コンパクトだが、お洒落な雰囲気になっている。が、落ち武者がのたうちまわっている。
リビングへのすりガラスのドアが夕日のオレンジに染まって、更に切なさを演出している。
「王子、本取りに行ったよね……あっ」
泣きそうな顔で寝転がっていた由香は、急にむくっと起き上がった。
「バカバカしい。きっとあの受付嬢……」
エコバックから、食品を冷蔵庫に淡々と入れながら、
「ぜーーったい。あの二人お似合いじゃん」
最後に豆乳を 入れて、代わりに缶ビールを手にとって、バンと勢いよく冷蔵庫を閉めた。
「私が、出会いのきっかけ作ったんじゃないの。馬鹿みたい」
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