それは、必然

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首を振って意識をはっきりさせながら、 扉のポケットに差し込んである、ミネラルウォータに変えた。 右手にクリアなボトルを持ちながら、 冷蔵庫にもたれててズルズルと、崩れるように床に座り込んだ。 暗い台所で、リビングからのオレンジ色の光だけに照らされる 姿は、自分のミスで金メダルを逃したスポーツ選手か、身を焦がすほど愛した恋人に別れを告げられたかのように、悲哀に満ちていた。 「はぁ」 深いため息をついた。その口を浄化したいかのように、由香はミネラルウォーターをこぼしながら一気に飲んだ。その後、左手の甲で濡れた口元を激しく拭った。 「後悔してもしょうがないわ」 ペットボトルで膝をポンと叩いて、リビングに戻っていった。 ベランダへ出る窓が開いている。5月の爽やかな風がレースのカーテンをヨットの帆のように膨らましていた。 「気持ちいいなぁ」 レースのカーテンをタッセルで結んでベランダに出た。 今年は10連休のゴールデンウィークだったが、由香は1日だけ友人とアウトレットモールに行っただけで、9日間はどこへも出かけなかった。広島の実家には、母親から地元の同級生の結婚話を聞かされて、いい人はいないの。いつまで一人でいるの。と聞かれるのが鬱陶しくなって、3年前から帰ってない。     
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