絶望の監獄

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「ありがとうございます、ミランダ殿、私も幸運を噛み締めております、素晴らしい御方に仕え、共に歩める事を」 ミランダの言葉を受けたクラリスは誇らしげに微笑みながら応じ、その言葉を聞いたアイリーンは恥ずかしそうにはにかんだが直ぐに表情を翳らせながら牢屋の外を見渡した。 がっしりとした造りの柵で覆われた四周からは日々形を整えていく陣営の様子を見ることができ、アイリーンは暗い表情でその光景を見ながら呟きをもらした。 「……この陣営が砦に変われば、豊富な琥珀の鉱脈がロジナの掌中に握られる、リステバルスから鋼玉と川真珠の産地をかすめ取り、それに加えてヴァイスブルクまで掌中に治める、周辺の国々はロジナの隆盛に惑わされその行動を手を拱いて傍観し、他の選帝候国でさえ迂闊には手が出せないでいる、私達はこのままロジナの隆盛をなす術も無く眺め続けるしか無いと言うのでしょうか」 暗い表情で呟くアイリーンの声を聞くクラリスとミランダの表情も暗く翳り、ミランダは暗い表情のまま掠れ気味に呟いた。 「……例えこのままなす術も無くロジナの屑どもの隆盛を見るしか無いとしても……私は精一杯抗うつもりです……アイリーン様、クラリス殿、私が完全に壊されてしまった時は……彼女達を、お願いします」 「……承知致しました、ミランダ様、どうかお心を強くお持ち下さい」 「……彼女達の事は私達にお任せ下さい、そして絶対に耐え抜いて下さいミランダ殿」 ミランダは悲痛な願いをアイリーンとクラリスに託しながら泥の様に眠るエルフの女兵士達を一瞥し、アイリーンとクラリスは瞳に涙を浮かべながら悲痛な覚悟を決めたミランダを見詰めた。 陣営外周 汚し尽くされながらも絶望的な抵抗を誓うミランダとその姿に唇を噛み締めるアイリーンとクラリス、無力感に苛まれる彼女達の預かり知らぬ所で状況が激変しつつあった。 陣営を守る為、東西南北に設置された外哨拠点を統制所として外出に散開した魔狼達、研ぎ澄まされた嗅覚と聴覚、暗視能力で陣営の外周に警戒網を形成する獣達に異変が生じていた。 木々の合間に潜み周囲の気配を探っている1匹の魔狼、その近くに1匹の栗鼠が姿を現した。 栗鼠は何かを促す様に魔狼を見詰め、魔狼はそれに応じる様に頭を下げた後に持ち場を走り去った。
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