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「俺思うんだけどさ、やっぱり白だと思う訳よ」
『僕』の『友人』は突然、放課後の美術室でそんな事を言い出した。
「いきなりどうしたのさ?」
「いやさ、これこれ」
そう言って『友人』は絵の具が付いていない筆でキャンパスを指し示す。
「俺たちってこんな感じなんだろうなぁと」
「本当にどうしたんだよ、いきなり」
「まぁ大したことじゃないんだけどさ、俺って実はなんにでもなれるんじゃないのかなぁとかそんな感じだよ」
「今頃中二病でも発症したのか?」
「言い方が悪いぞ。あえて言うなら青春だよ、青春」
「青春?」
「そう、青春だよ。こう生まれた時って何も知らないだろ? それがさ、こんな風になるってすごくねっていうね」
「昨日なんか読んだのか?」
「そういうのじゃないって。結局人生って自分のキャンパスに色を塗っていくことなんだろうなぁって」
「話が全然繋がってないような気がするんだけど」
「そうか?」
「いや、まぁ良いけどさ。それで話のオチは?」
「オチ? えぇっと、あぁ……そうだ、結局さ、みんなのキャンパスって真っ黒になるんだよ」
「お、おう」
反応に困る回答が飛び出す。返答に困っている『僕』を無視して『友人』は話を続ける。
「でも黒ってすごくないか? ほら裁判官とかの着る服の色もそうだろ。それと同じ感じでさ」
「何にも染まらないとか、そういう事?」
「そうそう。だからあれだよ。俺たちは自由にできる白のキャンパスに自分自身の色を付けて真っ黒にしていくってわけだよ」
「あぁ」
「何だよ、その中途半端な反応は」
「お前も真面目な話をするんだなぁって」
「そりゃあ、時々は考えたりするよ。だから今俺たちは白のキャンパスに色を塗っている最中ってわけだな」
「何色なんだろうな、今」
「きっとまだ白い部分がいっぱい残ってるだろうな」
「あぁ、それで何にでもなれるとか言い出したのか」
「そうそう。そういう事」
『友人』はどや顔をこちらに向ける。
でも人生というのはそういうものなのかもしれない。
真っ白なキャンパスを色とりどりに塗りつぶし、自分だけの染まらない黒にする。
その黒はきっと、何よりも鮮やかな黒なんだろう。
白に始まり黒に終わる。
『僕』たちはそうやって今日もキャンパスに色を塗る。
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