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息子はリビングのカーペットに胡座をかき、そこに孫を乗せて絵本を傷付けないように大切に大切に一字一句をゆっくりと声に出して読み丁寧にめくる。
孫は楽しそうな顔で絵本に見入っていたが、最後の頁を開く前にうつらうつらと頭を揺らし出した。
息子は眠りに落ちた孫を老人が再び座ったソファに運ぶ。
「やっぱり眠ったねぇ」
そんな言葉を出したのは老人の最愛の妻。
「あんたもそれを読んであげたときは寝付きが良かったものねぇ」
「そんな古いこと言うなよ」
年老いた母のからかいに苦笑する息子。
リビングから見えるキッチンでは息子の嫁が早々と夕飯の支度をしている。
のんびりとした日曜の午後。
家族が揃い同じ空間で過ごす。
老人にとっては、何者にも変えがたい贅沢だ。
老人の本は息子の手によって再び本棚へと戻る。
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