第11章 先輩と家族

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その日、真夜中に帰ってきた先輩は疲れきっていた。 直ぐに謝った私に先輩はただ一言「ごめん」と言っただけだった。 綺麗事だけじゃない本当の先輩に少しでも近づきたくて。 そんな気持ちでとった行動は先輩を傷付けただけで歩み寄るどころか新しく壁が出来てしまったようだった。 先輩が話したくないと言うのなら仕方が無い。 思い出したくないと言うのならそれでいいじゃないか。 そう思うことが出来ていたならどんなに楽だろうと思う。 それから私達はいつも通りに日々を過ごした。 正確に言えばいつも通りに過ごそうとしていた。 先輩に触れようとすると綺麗に避けるようになった。 私が想いを伝える前のように踏み込んだ話は上手にかわすようになった。 過去は無かったことになんて出来ない。 自分の言ってしまった言葉が重くのしかかる。 一度出てしまった言葉は決して無かったことには出来ないのだ。
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