第11章 先輩と家族

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そんな中、二つ年上の兄は偉大だった。 兄は辛くても泣き顔一つ見せなかった。 殴られて蹴られても、怖くて不安でいっぱいの時はいつも兄が「大丈夫だよ」と抱きしめてくれた。 自分だって苦しい筈なのに、空腹で死にそうなのは一緒の筈なのに、兄はいつでも優しかった。 だから私は辛くても平気だった。 私のたった1人の味方。 私にとってお兄ちゃんは世界一大事な人だった。 世界一好きな人だった。 そんな生活が1年近く続いてもう限界だった私は初めてあの女に反抗した。 そして、殺されそうになった私をかばって兄は死んだ。 そんな兄の死は私の人生を180度変えた。 母親は逮捕され、私は疎遠になっていた父方の祖父母の家に引き取られた。 祖父母の態度は可哀想な子に向ける哀れみだけだった。 そんな視線に耐えられなくて愛想笑いが上手くなったと思う。 思い出す度に私は壊れていった。 そんな感情をコントロールするには無かった事にするしかなかった。 だから、それまでの私は全部。 兄と共に消えて無くなったつもりだったのに。 今、大切な人の苦しそうな最後が離れない。
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