第11章 先輩と家族

31/36
前へ
/251ページ
次へ
「もう佳奈の傍には居られない」 「あの男にプロポーズでもされたんですか?」 「何で知って...っ!」 「先輩がいきなりこんな事を言い出すなんてそうじゃないかと思っただけです」 「そっか...」 佳奈に隠し事は出来ないな...。 「あの男と結婚するんですか?だから私はもう用済みって事ですか?」 「違うよ」 「じゃあ何で...っ!」 「前から言ってたでしょ。佳奈の気持ちには応えられないって。結婚はただのきっかけよ」 「私の思い描く未来にはいつだって先輩がいます。先輩が他の人を想っていたって、私に後輩以上の想いが持てなくても、それでも良かったんです。先輩のいない人生なんて考えられません」 そう言って佳奈は泣いていた。 不謹慎だがこの子の涙は綺麗だった。 少なくともこの子を手放したくないと思う程には。 でも、思えばたった数ヶ月で私はどれだけこの子を傷付けてきたのだろう。 私は続けなければならなかった。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加