第11章 先輩と家族

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「先輩っ!」 数日前と同じように倒れ込んだ私に佳奈の声が遠くで聞こえる。 殴られた時の痛みが、心の傷と共に隠れていた足の裏から這い上がってきて気持ち悪い。 どうしよう...。 苦しい...っ 「お兄ちゃんっ...」 ー助けて 「...なっ!?」 「先輩。ごめんなさい」 暖かい感触がして幻だった声が近くで聞こえた。 「っ...」 抱きしめた事に気付いて逃げ出したくなる。 佳奈はそんな私に構わずに強く抱きしめてくる。 「先輩を傷付けてばかりでごめんなさい」 「...」 「でも、先輩が好きなんです。先輩...私の事嫌いにならないで...っ」 佳奈はそう言って再び涙を流した。 佳奈の声は私なんかよりも酷く震えていた。 「...佳奈」 佳奈は必死で私を抱きしめてくる。 その体は小さくて弱々しく震えていて私が望んでいた物とは全く違っていた。 けれど、何より暖かくて真っ直ぐで強い物を感じた。
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