第12章 気に入らない

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第12章 気に入らない

〈佳奈サイド〉 先輩と離れたくない。 私の頭の中はただそれだけだった。 先輩が私の前から居なくなると聞いたらそれ以外何も考えられなかった。 怖くて仕方がない。 愛される事に興味は無いだなんてただの強がりだったと気が付いてしまった。 私はきっと嫌われるのが怖いだけ。 先輩が離れていくのが怖いだけなのだと。 どんな事をしても隣にいたいと。 ーいるよ。ここに居るから 強く抱きしめた大切な人が優しくそう呟いたのが聞こえた。 止まらない涙が奥から更に溢れ出てくる。 「先輩っ」 私は離れないように強く強く抱きついた。 ゆっくりと先輩の手が私の髪を撫でる。 本当に嫌になる。 これ以上好きになんかなりたくないのに。 「先輩っ好きです」 私はこの瞬間、どんな事をしてでも先輩を手に入れたいと思ってしまった。 それは決して先輩の為なんかじゃなく自分の為だけに。 そう思ってしまった。
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