第13章 終わりと始まり

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〔佳奈サイド〕 ムズムズする。 ついつい私は始めたばかりの仕事を途中で抜け出し本気のかくれんぼをしていた。 自分でも犯罪臭いと分かっているつもりだったが止められなかった。 今日、先輩はあの男にプロポーズの返事をする。 先輩は自分の事よりも他人を優先させる節がある。 きっと、私と一緒にいる事を決めたのだってそう。 ここに居ると言った先輩を信用していない訳ではない。 しかし、もしかしてあの男にせがまれれば頷いてしまうんじゃないかという不安が拭いきれなかった。 何より大一番に向かう心持ちでいる先輩を少しでも傍で支えたかった。 「私は光のプロポーズには応えられません」 耳をすませるとはっきりとした先輩の声が聞こえた。 「...!?」 正直先輩のその凛とした態度に驚いた。 私は更に耳をすませる。 私には勿体ないという先輩の声が聞こえる。
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