第14章 アップルパイと

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第14章 アップルパイと

〔颯那サイド〕 「暑い...」 うちわで風を送りハンカチで汗を拭いながら人混みを歩く。 日曜日。午後5時半。 光と別れてから早1週間。 私達は近所の花火大会に来ていた。 何か夏らしい事がしたいと話していた時に舞い込んだ花火大会のチラシに佳奈が飛びついたという訳である。 佳奈がこういった行事に興味を持つとは少し意外だった。 まだまだ知らない事が沢山有る。 「何で扇子じゃなくてうちわなんですかぁ?」 佳奈は「浴衣と先輩は扇子が似合うのに!」とか何とか言って不服そうである。 佳奈は全く汗をかいている様子がなく涼しい顔をしている。 汗っかきな体質を改めて恨んだ。 桜柄の扇子を押し付けられるが拒絶してうちわを仰ぎ続ける。 うちわの方が面積が広くて沢山風が送れるし、この人混みで扇子なんて仰いでいたら確実に落として失くしてしまう。 「疲れた...」 花火が始まるまであと1時間ほど。 とにかく周りは人人人! 今日は花火じゃなくて人を見に来たんじゃないかと思うほど人しか見ていない。
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