第16章 甘い思い出

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何で?先輩はここに居るのに。 何で私は泣いてる? こんなに寂しい気持ちになるのはどうして? 私は先輩が居れば限りなく幸せで、最近は幸せ過ぎてどうにかなるくらいで。 それなのに幸せであればある程涙が止まらない。 ノンケの先輩が一緒に居てくれるのなんて今だけだって分かってるから。 それでも先輩と隣にいることを願ったのは私自身で。 今が幸せなら良かったはずなのに。 本当に...? 「佳奈...?」 先輩が心配顔で私の顔を覗き込む。 先輩の優しさに涙が溢れそうになる。 ダメ、これ以上泣いたら。 これ以上漏らしたらだめ。 「感動して...先輩がすごく綺麗だったから」 私は必死の笑顔で守る事にした。 「...///」 お願い。気が付かないで。 「...っ」 息を飲んで先輩の応えを待った。 「佳奈って本当に阿呆よね…」 そんな私に先輩は呆れたように呟く。 「もぉ!さっきから阿呆あほって私は阿呆じゃありませんよぉ!」 膨れ面をすると先輩が安心したように微笑む。 そんな先輩にほっと胸をなで下ろす。 怖かった。すごく。 気付かれたらもう先輩と一緒には居られなくなる気がした。
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