第16章 甘い思い出

9/9
前へ
/251ページ
次へ
〔颯那サイド〕 「佳奈...どうして泣くの...?」 「えっ...?」 突然泣き出した佳奈に戸惑う。 佳奈自身も気が付いていなかったようで自らの頬に指を当てている。 「佳奈...?」 最近は特に感情の起伏が激しい。 心配になって佳奈の顔を覗き込む。 「感動して...先輩がすごく綺麗だったから」 そんな私に佳奈は笑顔を向ける。 「...///」 心を奪われた。 何故か胸が締めつけられる笑顔だった。 「...っ」 佳奈は今にも壊れてしまいそうに私を見つめていた。 「佳奈って本当に阿呆よね…」 「もぉ!さっきから阿呆あほって私は阿呆じゃありませんよっ!」 佳奈はほっとしたように無邪気に微笑む。 私は踏み込まない事にした。今はまだ。 佳奈の瞳がこれ以上踏み込まないでと言っている気がしたから。 付き合って初めてのデート。私からしたら佳奈との初デートだった。 佳奈はたいして考えていないみたいだったけど、私は楽しみにしていたし、浮かれていたと思う。 佳奈がいつもと違うと感じたのなら尚更だ。 大切に思うほどに前に進む事が怖くなる。 この時ほどこの子の心を覗き見したいと感じた事はなかった。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加