第6章 誕生日

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「...い、先輩」 あの子が私を呼ぶ声がする。 ー好きです先輩 真っすぐに私を見つめて。 いつも嬉しそうに。幸せそうに。 「あんた...」 「先輩。誕生日おめでとうございます」 「何で...?」 「だって先輩、今日が誕生日でしょう?」 「約束は明後日でしょ」 「どうしても今日、先輩におめでとうを言いたかったんですよ」 まるで私の嘘なんか最初から分かっていたみたいに。 私の欲しかった言葉をくれる。 「責めないのね」 私はこの子が傷つくと分かっていて試したのだ。 私をどれだけ愛しているのか。 私を愛してくれている人を盾にして。 そんな私を責めないことに驚きもしない私はひどく自分本位で情すら無いのかもしれない。 ずっと周りや自分を騙していただけ。 この子はそれに気づいて一瞬傷ついた顔をした。
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