第6章 誕生日

9/12
前へ
/251ページ
次へ
「..んでなんですか...?どうして由香なんですか?何で女なんですか?私への当てつけですか?」 「えっ...?」 佳奈の瞳から溢れた涙が私の頬を濡らした。 「私は決して多くは望まなかったのに。私が女だからって言い訳すら潰して...!そんなに先輩は私を遠ざけたいんですね」 佳奈の言っていることはあながち間違いでは無かった。 私のことを好きだと言っておきながら多くは望まないという佳奈にムカついた。 傍にいれば間違った道に進みそうで怖かった。 「最低です。こんな想いをしたってちっとも報われない!最低な先輩を嫌いになれない私も..!」 だから嘘をついて傷つけて遠ざけたのに。 私の上で喚き散らすこの子の涙が心地いいと感じるのは何故だろう? 「世界で一番先輩を愛しているのは私ですよ?私じゃあ駄目なんですか...?」 苦しそうな顔をしているこの子をもっと泣かせたい。 私の言動に一喜一憂するこの子をもっと振り回したい。 ゛佳奈を傷つけたくないんです。これ以上、佳奈を苦しませないで下さい。゛ 私はそう言った夏目由香とは真逆の感情を持っている。 自分は返せないクセに...。 ーこの子の愛が欲しい。 そう思ってしまう私はどこまで行っても最低なままだ。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加