第6章 誕生日

10/12
前へ
/251ページ
次へ
「佳奈」 「何ですかっ...?」 名前を呼ばれて少しだけ冷静になった佳奈は恥ずかしそうに涙を拭って応えた。 佳奈の表情は不安そうでいつもの面影はない。 その姿は何となく怯えているようにも感じた。 そんな佳奈を引き寄せるとその唇に自分のそれを軽く重ねた。 「っ...!?せん..ぱい...?」 目を見開いて私を見る。 「今日は私の誕生日でしょ。私のお願い聞いてくれる?」 「...?私に出来ることなら何でも」 我侭で余りにも自分勝手すぎる私の願いを。 それでもこの子以外には叶えられないからこそ。 間違った方向へ進み出すこの道を一緒に歩いて欲しい。 ーだから私は最低なままの私でいる道を進むしかない。 「佳奈が欲しい」 大きな瞳が零れ落ちそうなくらいに見開いた佳奈に唇を重ねると隙間から舌をねじ込んで絡めとる。 力のはいった絡めた指先から想いが伝わったように感じた。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加