第7章 後輩の幸せ

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先輩の卒業が近づくにつれて私はこの想いを伝えるべきかどうか葛藤していた。 ー好きです。先輩。 何度も何度も心の中で練習したけれど口に出してしまえば全てが崩れてしまいそうで怖かった。 そんな時だった。 両親が離婚した。 父親の不倫が発覚したからだ。 裏切られたはずの母親は愛する人を引き止めようと必死だった。 けれども、父親は私達とはいられないと言って聞きいれようとしなかった。 そこにいたのは自分を愛して欲しいと望む1人の女と他の女を愛し、妻子を捨てようとする1人の男だった。 男は私達を置いて家を出た。 ごく一般的な家庭だと思っていた。 好きだなんて照れくさくて言えないけど親として信頼していたし、愛していた。 けれど父親だと思っていた男は私の中で醜い生き物へと変わった。 親権は母親のものとなったけれど私は狂ってしまった母親と2人きりの生活は耐えられなかった。 そんなさなかに先輩は卒業し私は勉強を今まで以上に頑張った。 それは母親を支えようとしたからではなく自分が不安だったからだ。 親不孝な最低な娘だろう。 いつだって私は自分が一番大切だった。 けれど、そんな私に気づくと私を残して自ら命を絶った。 私の母親は愛されなければ生きてすらいけないか弱い女だったのだ。 ー私が母親を殺した。 どんなに後悔したってもうお母さんは目を開けてはくれない。
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