第8章 初めてのケンカ

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「ただいま」 自宅の鍵を開け電気を点け誰もいないことを確認する。 もう2週間も経ったというのにこんな癖がついてしまった。 いつかは戻って来るものだと思っていたけれどそんな保証はどこにもないじゃないか。 この荷物だって気が付いたら無くなっていて...なんてことがあったって不思議じゃない。 そうしたら私と佳奈を結ぶ物は何一つ無くなる。 無性に寂しく感じるのはさっきまで光と一緒に居たせいだろうか...? それとも失敗作のシチューをこれから一人で処理しなくてはいけないからだろうか...? 美味しいシチューを光と一緒に食べることが出来ていれば今頃私はこんな気持ちにはなっていなかった...? 「料理くらい練習しとけば良かったな」 そうすればあの子が家に住み込むこともなくて。 そうすれば喧嘩することもなくて、あの子に振り回されることもなくて... 「佳奈...あいたい...っ」 きっとこんな想いをすることもなかった筈だから。
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